
1990年10月3日 ― 東西ドイツが統一される
次に来たときに
1990年10月3日、東西ドイツが統一されました。ベルリンで朝を迎えた架空の姉妹を描き、国の統一と、一人ずつの暮らしのつながりを考えます。
ここからは、架空の人物による歴史短編です。
窓の外で、誰かがまだ歌っていた。朝になっても昨夜の続きのような声だった。マルタは机の上に濃い色の上着を広げ、取れかかったボタンを指先で転がした。隣に座る妹のレーネは、糸の色なんて似ていればいい、と言った。昔から、そういうところは変わっていない。
妹は前の晩から泊まっていた。二人とも眠る機会を逃した。外へ出ては戻り、お湯を沸かし、また窓を開けた。ドイツが一つになる。何度も耳にしていた言葉なのに、日付が変わる瞬間には、どちらも相手に何を言えばいいのかわからなかった。結局、妹が寒いと言い、姉が上着を貸した。
その上着のボタンを、今、縫い直している。マルタは妹の暮らしを質問で埋めたくなかった。仕事はどうか、家賃はいくらか、これから何をするのか。聞きたいことはいくらでもあるが、久しぶりに会うたび、二人の間には説明しなければならない年月が座ってしまう。
「針、見えにくい?」と妹が聞いた。「見えるわよ」。すぐ答えてから、マルタは針を渡した。レーネは糸を通すと、何も言わず返してくれた。子供のころは逆だった。妹のほどけた袖を母に見つからないように縫い直してやった。そのお礼に、レーネは姉の嫌いな家の用事を代わってくれた。二人で秘密を作るのが上手だった。
壁が開いた日と、今日が違うことは知っている。昨年から会えるようになっても、暮らしが突然同じになったわけではない。妹の言葉に知らない響きが混じることがある。自分の古い習慣を、妹が不思議そうに見ることもある。それをいちいち、東では、西では、と言い直すのにマルタは疲れていた。
針が固いところで止まった。裏地を巻き込んでいる。「引っ張っちゃだめ」とレーネが言った。二人は顔を寄せ、糸を少し戻した。妹の髪に白いものがある。向こうも、姉の手のしわを見ているのだろう。国が別々だった間にも、二人は同じ速さで年を取っていた。その当たり前のことが、今朝は胸にこたえた。
縫い終わるころ、外の歌声がやんだ。妹が朝食を買いに行こうと言った。マルタは、家にも食べるものはある、と答えかけてやめた。上着を返すと、レーネはボタンを一つずつ留めた。最後の一つだけ少し固い。「また直す?」と聞くと、妹は首を振った。「次に来たときに」。
マルタは余った糸を巻き取った。次という言葉が、約束を取りつける言葉ではなく、予定を少し先へ延ばすために使われた。それがよかった。妹を待たせないように靴を履き、鍵を取る。どちらへ歩くかは、外へ出てから二人で決めるつもりだった。
史実として確認できる部分
- 1990年10月3日、ドイツ民主共和国(東ドイツ)がドイツ連邦共和国に加わり、ドイツ統一が実現した。[1・2]
- ベルリンの壁が開放された1989年11月9日と、統一の日は別の日である。[2]